<古典部シリーズ>のレジュメその3

 小説を読み返して思ったのですが、シリーズとして積み立てた伏線があるんですよね。前作を足がかりにして一回り大きくなる物語の構造。このあたりの話運びもロジックとして紐解けそうな気になります。

 

 ではレジュメつづき。

 

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4.遠まわりする雛(春~次の春)

  • シリーズとして「新しい軸」が描かれる連作短編集。
  • やるべきことなら手短に(春)。保留を指摘される奉太郎。
  • 大罪を犯す(春)。意外に思う奉太郎。それは傲慢というものだ。
  • 正体見たり(夏休み)。枯れ尾花のダブルミーニング
  • 心あたりのある者は(秋、十文字事件より後)。推論の才能を発揮する奉太郎。雑談できる間柄。
  • あきましておめでとう(正月)。家同士のつきあい。家のおつかい。対面ってなんだ。
  • 手作りチョコレート事件(2月)。摩耶花のアプローチを避け続ける里志の「色」。最初の「~手短に」とは対になる。
  • 遠まわりする雛(春休み)。ここで再び「保留」。「保留」を理解する奉太郎。
  • 地の文つまり奉太郎の独白のなかに暦の言及があり、2000年~2001年の出来事と分かる。

 

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 すこし文章化。ネタバレしないように書きます。

 

 巻頭の短編「やるべきことなら手短に」では、まだ出会ってまもない奉太郎とえるです。この話はアニメ一話で既に放送されました。劇中で、奉太郎は里志に「それは状況の保留だ」と指摘されますが、では、奉太郎はいったい何を保留したのか?

 アニメでは奉太郎の灰色と薔薇色の葛藤について、えるがその天秤を揺らす立ち位置にいるような演出があります。そうですね。短編集でも、季節を移しながら、二人の関係について、その様子が変わっていく様子が描かれます。

 そうやって距離を近づけていく二人(ちかづくんです!)ですが、「手作りチョコレート事件」では、ある分野において二人の先にいる里志と摩耶花の関係が対比として提示されます。ラスト「遠まわりする雛」に向けて、前座として用意されます。

 いや、事件のときは正確にはまだ対比になっていませんね。まだ対岸、まだ他人事。それは「遠まわりする雛」で奉太郎にやってくるのです。

 

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 (なんのことやら)

 

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 アニメは、本の刊行順ではなく、物語の時系列をあわせていくようです。公開された放送予定の情報から、温泉回「正体見たり」がはやいうちに放送されることが明らかにされています。

 アニメ1話の出だしは、校門をぬける奉太郎と桜吹雪でした。4巻「遠まわりする雛」までを織り交ぜて物語を進めるのなら、もういっかい桜吹雪が見れるのでしょうか。

 それはとっても見たいぞ、という原作厨のつぶやきです。

 

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 次の本は「ふたりの距離の概算」ですが、またいずれ。単行本が見つからなかった。もうすぐ文庫化されますね、そのときにでも。